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賃金、人事制度講座

適正な人件費水準を考えるには

大切な「人件費」の考え方

人を雇うと必ず「人件費」というコストが発生します。
それは毎月支払っている給与だけではありません。

こうしたことを意識していない経営者が、意外と多いようです。
そして利益が落ちてきたり、赤字になって初めて数字を見て、驚くということになります。

そうなってからでは遅すぎます。
客観的な数字をきちんと把握し、コストコントロールをしていかないと、大変なことになります。

人件費で注意することは

人件費で厄介なのは、すべてコントロール可能とは限らないということです。
増やしたくない、増やしたつもりはないのに、いつの間にか人件費が増えていることがあります。

「そんなのあり?」と思うかもしれませんね。
でも、「あり」なのです。

「それは、なに?」

大きいのは、「法定福利費」、つまり社会保険料の会社負担分です。
社会保険財政の逼迫を反映して、社会保険料は毎年のように上がっています。これはどうにもなりません。会社が何もしなくても、勝手に経費が増えていきます。

また、賃金が上がれば、それに伴って社会保険料も上がります。
「賃上げ○○円」でも、「人件費○○円+α円アップ」となるのです。

人件費水準はどれぐれいにすれば?

人件費が多すぎると、経営を圧迫し、立ち行かなくなります。

だからと言って削りすぎると、従業員の受け取る賃金も減ります。
みなヤル気をなくし、会社から逃げていってしまい、これまた経営が立ち行かなくなります。

どれぐらいの水準にするのが適当なのでしょうか?

2つの指標に注目

こうしたことを考える指標は2つ。
ひとつは「売上高人件費比率」、もうひとつは「労働分配率」。

「売上高人件費比率」
売上高に占める人件費の割合です。
「人件費÷売上高×100」という算式で出します。

「労働分配率」
付加価値に占める人件費の割合のことです。
「人件費÷付加価値×100」という算式で出します。

「付加価値」とは、会社が生み出した新たな価値。
「営業利益+人件費+動産・不動産賃借料+租税公課」という算式で出します。
これに減価償却費を加える方法もあります。

この2つの指標を見て、人件費コストをコントロールしないといけません。

ではどのぐらいが適当なのでしょうか?

答えは「無し」。

「そりゃないだろう」と思われたかもしれません。
しかし事実です。

労働分配率や売上高人件費比率に限らず、経営指標に「これがベスト」というのは存在しないのです。
たとえば、「売上高営業利益率は○○%であるべし」なんていう話は聞いたことがありません。

それなら、どう考えればいいのでしょうか?

ひとつは業界平均と比較してみることです。
もちろん、業界平均が正しいとは限りません。
ただ何はともあれ、経営が成り立つ数字と言っていいと思います。

もうひとつは、自社の過去の数字の推移です。
過去5〜10年ぐらいのスパンで推移を分析してみましょう。
業績との関係も見る必要があります。
そこから、自社にとって適正なゾーンというのを捉えていけばいいのです。

これからの人件費コストを考える

理想は、「賃金は高く、人件費は抑え目に」。
「そんなこと、できるのか?」と思うかもしませんね。
でも、できるのです。
別にマジックを使うわけではありません。

実現のカギは「賃金のメリハリ」。
つまり、「貢献した人に報いる賃金体系」にすることなのです。

それをやらないと、「それほど賃金は高くないが人件費は高い」ということになってしまいます。
これが、多くの会社の実情ではないでしょうか。賃金体系をうまく設計することで、人件費は、「経営を圧迫するコスト」から、「将来新たな価値を生み出す投資」に大きく変貌します。
同じおカネでも、活き方がまったく異なってくるのです。
このような面でも、賃金改革は急務なのです。

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