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会社が従業員にかけるコストは、賃金だけではありません。
社会保険料会社負担分などの法定福利費、退職金費用(退職給付費用、退職年金掛金)、持家支援などの法定外福利費、採用費、教育費など、従業員の手元に直接渡るのではない諸々のコストがかかっています。これらをトータルしたものが、総額人件費です。
ここをきちんと把握しないと、会社が従業員にかけているコストはどのぐらいなのか、そしてそれが適正な水準なのかが分からないのです。
総額人件費で代表的なものは「売上高人件費比率」です。
これは「人件費÷売上高×100」という算式で求めます。
次に「労働分配率」という指標も見ます。
労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合のことです。
「人件費÷付加価値×100」という算式になります。
付加価値とは、会社が新たに生み出した価値のことです。
「税引後当期純利益+租税公課+法人税等+支払利息・割引料+社債利息+人件費+賃借料+減価償却費]という算式で求めます。
賃金と賞与はどう考えるべきものなのでしょうか?
基本的には「月々の賃金は安定的に、業績の変動は賞与に反映」ということだと思います。
それではこれまで、業績と賞与の関係はどうなっていたのでしょう?
それを分析します。
業績指標として一般的なのは営業利益でしょう。それ以外に、売上高、経常利益、付加価値、ROI、EVAなど様々なものが上げられます。
賃金決定に大きな影響を与える、人事評価の現状がどうなっているかを分析します。
仮に、その会社の評価制度がS,A,B,C,Dの5段階となっていて、A評価が全体の800%以上を占めていたら、どういうことになるでしょうか。たぶん、賃金に差はつかず、昇進や昇格を決めるときは、評価結果は使い物にならないということになるでしょう。これだと何のために人事評価をやっているのか、分からなくなります。
年齢と評価の関係、役職と評価の関係などを探ります。
そして、分析結果から、問題の所在を探ります。評価制度そのものか、評価基準か、評価制度の運用か、管理者の問題か、どこにあるのかによって、その後の対応も変わってきます。
まずは、年齢と評価の関係を分析してみましょう。
縦軸に評価段階、横軸に年齢を取って散布図を描いてみます。
もし、年齢との相関が高く、右肩上がりのカーブを描いていたら、年齢が高いほど評価が高くなっているということです。
年齢が高い人の方が(つまり、経験が豊富なほうが)、評価が高くなるのは当然だという考えもあります。
高い賃金を得ている人に求められる役割は、賃金が低い人より、高いレベルになります。
その「ハイレベルな役割期待」に対して、どう応えたかを見るのが人事評価。
そうであれば、「年齢が高く経験豊富なら、評価も高くなる」とはならないはずです。
また、年齢が高い=能力も高いと決め付けることはできません。
逆も同様です。
評価は年齢と切り離しつけるべきでしょう。
次に職能資格や役職などと評価の関係を見ます。
これは、資格などの処遇軸ごとに円グラフを作るのがよいでしょう。
ここでもよくあるのが、高い資格になるほど、評価も高くなるという現象です。
先ほどは年齢という、能力や成果とはあまり関係ないものを基準にしましたので、評価との相関関係を見るといっても限界がありましたが、職能資格や役職が基準となると話は別です。
高い資格、役職となれば、当然、求める期待も高くなります。「求める期待水準」は資格要件などで定義されているのが普通です。
その期待水準に対してどうであったかを評価するわけですから、高資格・高役職=高評価ということにはならないはずです。
「中堅社員としてどうであったか」
「部長としてどうであったか」
このような視点が必須ですね。
仮にその会社の評価制度がS,A,B,C,Dの5段階となっていて、A評価が全体の50%以上を占めていたら、どういうことになるでしょうか。(これを「寛大化傾向」といいます)。
たぶん賃金に差はつかず、昇進や昇格を決めるときには、評価結果は使い物にならないということになるでしょう。
これだと何のために人事評価をやっているのか、分からなくなります。
もし、中心点のB評価が全体の80%を占めていたら、どういうことになるでしょうか。(これを「中央集中化傾向」といいます)。これも同様な問題を生じます。
こうなってしまう原因には様々なことが考えられます。
評価制度そのものか、評価基準か、評価制度の運用か、管理者の問題か、どこにあるのかによって、その後の対応も変わってきます。
もし「どうも社員にヤル気が見られない」とお感じになっていたら、一度モラールサーベイを実施してみることをお勧めします。
モラールとは、「組織の構成員が共通の目標を達成するために努力している状態」を指します。
平たく言えば、組織全体がどの程度一体感をもって、やる気になっているかということです。
モラールが業績に与える影響は小さくありません。モラールの現状把握は、経営上重要な課題です。
<たとえば、モラールサーベイで、「賃金額に不満を感じている」、「仕事をしても報われないと感じる」という傾向が現れていたら>
まず、会社の賃金額を同業種・同規模の賃金相場と比較してみます。
世間相場より著しく低かったら、不満の原因のひとつはそこにあると見て間違いないでしょう。
ただ、会社の支払能力という限界がありますから、大幅な賃上げは難しいと思われます。
他に削れる経費はないか、精査する必要があります。
それと、成果をあげている人には高い賃金・賞与を支払うようにするといった工夫も必要かもしれません。
いずれにしろ、限りある原資を有効に活用する手立てを考える必要があるでしょう。
賃金の分布状況も見ます。
賃金額に関する不満は、「自分はこんなにがんばっていて、成果もあげているのに、ぶらぶらしている○○さんと同じ賃金なのは納得いかない」とか「自分と○○さんは同じようなレベルの仕事しているし、できばえも同じだ。それなのに、なぜ自分の方が賃金が低いのか」といった、賃金格差に起因するものが多いと思われます。
このような不満が多ければ、まず、賃金と評価の相関関係を見ます。
もし、賃金額と評価に相関がなければ、そこを今後どうしていくかが検討課題になります。
もし賃金と評価の相関が強かったら、今度は評価の分布状況を見ます。
もし、評価がほとんど分布していない、つまりほとんどの人が同じ評価に集中していたら、賃金に差はつかなくなります。
評価がそれなりにちらばっていたら、今度は評価制度そのものや、その運用を分析します。
もし評価項目に「成果」がなければ、「成果をあげても評価されない」ということになります。
ここは、会社の人事政策そのものです。どういう人に報いたいか、検討する必要があります。
ある人が「成果で評価してほしい」と言っていても、会社にその意思がなければ、それに応えることはできません。
その場合、会社の人事政策をきちんと説明し、それでも納得がいかなければ、辞めてもらうしかないかもしれません。
また、そういう人が多ければ、会社の人事政策そのものを見直す必要もあるかもしれません。
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