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職能資格制度は、職務遂行能力を基準とした人事制度です。
それでは、その「職務遂行能力」をどうやって測定・判定するのでしょうか。
能力は、その人が保有する「属人的」なものです。外から見ていても、わかりません。
ペーパーテストというツールもありますが、これはあくまでも補助手段と考えるべきです。
職務遂行能力のある・なしや、そのレベルはどこに現れるでしょうか。それは仕事以外にあり得ません。
ということは、つぎの3つのことが分かれば、その人の能力レベルが判定できるということになるのです。
会社にどんな仕事があり、それぞれの仕事はどのぐらいのレベルなのかを明らかにするのが、これから見ていく「職務調査」という手法です。
職務調査を教科書通りにやると、相当な作業量になります。
なにしろ、会社にある仕事を全部洗い出そうというのですから。
「そこまではとても…」とお考えの方も多いと思います。
また、最初は大々的な作業をやったものの、その後、まったく見直さないまま、ほったらかしになっているということも少なくありません。
そうなると…
「こんな仕事、もうやっていないよ」
「○○という仕事が入っていない」
…ということになり、せっかくの作業がムダになってしまいます。
こんなことにならないため、作業をもっと簡略化することも可能です。
どうすれば?
その前に、原則的な職務調査のお話をしましょう。
職務調査では、仕事を「課業(task)」という単位でとらえます。
職務(job)とは、1人の人が担当する仕事の集まりです。
課業(task)とは、職務(job)を細分化した、仕事の最小単位です。
こうしてコトバで説明すると、抽象的で何だかよくわからないので、採用の仕事を例にご説明します。
・「採用職」というのが、ひとつの職務(job)です。
・採用業務を、「採用基準の作成」「面接の実施」などと分解したものが課業(task)です。
例に上げた「採用基準の作成」という課業を、さらに細かく分解することもできます。しかし、そこまで分解して意味があるかどうかが問題になります。つまり、課業とは、「意味のある仕事の最小単位」ということになります。
課業(task)とは、「仕事の最小単位」です。
それでは、どの程度まで細かく分解するのがいいのか。これには絶対的な決まりはありません。現実の仕事の分担をどうしているのかを見て、決めていくのがいいと思います。
たとえば、「採用」という仕事で、Aさんには、「採用計画の立案」、Bさんには「募集広告の作成」を担当させていたとします。
その場合、この「採用計画の立案」、「募集広告の作成」というのがそれぞれ、ひとつの課業となります。
「募集広告の作成」という業務をさらに細かく分けることもできます。「募集コピーを考える」とか「広告のレイアウトを考える」などといったことです。ただ、そのように分けて業務を分担させることがあり得るでしょうか?多分、ないでしょう。であれば、そこまで細かく分ける必要はありません。
また、1人で「採用計画の立案」、「募集広告の作成」の業務を両方やっていることもあります。(現実にはこの方が多いかもしれません)。それなら、この2つを、1つの課業としてしまうのがいいのでしょうか。これはあまりお勧めしません。内容、質が異なりすぎるからです。もし、そうするのなら、「採用」というくくりにした方がベターです。
つまり、その課業のレベルを判定し、資格等級に対応すのかを決めるわけです。
すでに作成している「職能要件書」に照らし合わせ、「企画力」、「実行力」などの能力区分ごとに分析していきます。
「横串を通す」ということです。
「営業職の○○という仕事」と「技術職の○○という仕事」が同じ資格等級なのか、異なるのかを見ていきます。
この作業を怠ると、資格・課業対応表が機能しなくなります。
しかし、完璧なすり合わせは不可能です。「営業職の○○という仕事」と「技術職の○○という仕事」のレベルが同じなのか、違うのか、厳密な判定は不可能です。
従って、「どう考えても入門レベル」、「明らかに上級者レベル」といった程度のすりあわせをし、あとは、その職種の中で決めた序列を信用するのが現実的です。
以上が職務調査の概略です。
それをもっと簡略化した、現実的な方法は?
私は、この職務調査(課業分析)を、「代表的な課業を分析する」という手法に切り替えることをお勧めします。
「代表的」の基準は、「重要なもの」と「時間を多く費やすもの」の2つの軸です。
たとえば、人事採用職という職務の代表課業を、資格等級ごとにいくつか選び、分析するということです。
こうして作成した、資格・代表課業対応表を、年1回、メンテナンスすればいいわけです。
この方法は、職能資格制度だけでなく、役割等級制度などでも使えます。
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